吊り作業では、荷の種類や条件に合わせて適切な吊り具を選ぶことが安全確保の大前提です。しかし現場では、次のような悩みが多く聞かれます。
- ワイヤーロープ・チェーン・繊維スリングの違いが分からない
- フックやシャックルなど金具の選び方が合ってるか不安
- 吊り具の誤使用による事故リスクが気になる
この記事では、主要吊り具の種類と特長を体系的に整理し、用途別の最適な選定ポイントをわかりやすく解説します。さらに、ワイヤーロープ吊り具を安全に使うためのキンク防止や点検基準など、現場で役立つ実務的な知識も学べます。
吊り具選びの迷いを解消し、安全と作業効率を両立するための指針としてご活用ください。
ニッサンスチールはJIS規格のワイヤーロープを基盤に、安全性を保証しながら、規格外・特注や大ロットにも柔軟に対応します。
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吊り具とは? 基本構造・役割・安全の考え方
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吊り具とは、クレーンやホイストを使用して荷物を「吊り上げ・保持・移動」するための作業用器具の総称です。玉掛け作業においては、荷に直接取り付ける スリング(ワイヤーロープ・チェーン・繊維) のほか、フック・シャックル・アイボルト・リング などの金具類が組み合わされ、1つの吊り具システムとして機能します。
吊り具は、荷の重量・形状・重心位置などに合わせて最適な種類を選定する必要があり、その選び方を誤ると強度不足や方向性の不適合による事故につながる点が大きな特徴です。
吊り具の定義と吊り作業の基本
吊り具は、荷物とクレーンをつなぐ「命綱」の役割を果たします。現場では、ワイヤーロープスリングのような金属製のスリング、傷をつけにくい繊維スリング、耐熱性と耐摩耗性に優れたチェーンスリングなど、作業条件に応じた多様な種類が使われます。
吊り作業では、荷重(ワーキングロード)・吊り角度・重心位置の把握 が特に重要で、これらを誤ると荷のバランスが崩れ、吊り上げ中の回転や転倒を招きます。正しい吊り具の選定と、荷に適した掛け方が作業の基本です。
吊り具に求められる強度・方向性・形状のポイント
吊り具は、「荷を安全に保持できるか」という観点で設計されており、強度・方向性・形状の3つが最も重要なポイントです。
- 強度:荷重に対して十分な安全率が求められる。ワイヤーロープやチェーンは径・等級によって破断強度が異なる。
- 方向性:フック・シャックル・アイボルトなどは、荷重方向が設計値と異なると強度が大きく低下する(例:アイボルトは横荷重に弱い)。
- 形状:荷の角・エッジ部分の有無でスリングの適性が変わる。一般に繊維スリングは角荷に不向きで、ワイヤーロープは曲げ半径の影響を受ける。
このように吊り具は「何を吊るか」「どの方向に荷重がかかるか」「形状に適しているか」を踏まえて選ばなければ安全性が確保しにくくなります。
誤使用で起こる事故例と安全に使うための前提知識
吊り具の誤使用は、重大事故につながる代表的な作業リスクの1つです。特に以下の誤りが多くみられます。
- 荷重に対して強度不足の吊り具を使用
- 吊り角度が大きくなり、スリングの張力が設計値を超過
- フック・アイボルトの方向が不適切で、急激な強度低下を招く
- ワイヤーロープにキンク(捻れ・座屈)がある状態で吊り上げ
- 点検不足による摩耗・素線切断・変形の見落とし
これらは、いずれも「選定ミス」「点検不足」が原因で発生します。安全に吊り具を使うためには、毎回の点検、荷の形状確認、吊り方の選択、そして適切な強度の吊り具を選ぶことが不可欠です。
ワイヤーロープ吊り具の種類 「スリング・フック・金具」を比較
吊り具は大きく「スリング」「フック」「連結金具(シャックル・アイボルト等)」の3系統に分類できます。それぞれ役割が異なり、吊り上げる荷の重量・形状・方向によって最適な組み合わせが変わります。
ここでは、現場で最も使用される主要な吊り具を体系的に整理し、特長と適用範囲を比較しやすい形でまとめます。
スリングの種類(ワイヤーロープ・チェーン・繊維)と選び方の軸
スリングは、荷に直接かける「主役の吊り具」であり、素材によって強度・柔軟性・耐久性が大きく異なります。
1. ワイヤーロープスリング
- 高強度で重量物向け
- 曲げに強く、耐久性が高い
- 建設現場・製造工場で最も使用される
- ただし、捻れやキンクが発生すると強度低下が大きいため、点検が必須
2. チェーンスリング
- 耐摩耗性・耐熱性が高く、過酷環境向け
- 長さ調整が容易(ショートニング可能)
- 比較的耐性が高い
- ただし、重量があるため取り回しはやや重め
3. 繊維スリング(ベルト型・ラウンド型)
- 軽量で扱いやすく、傷をつけたくない荷に最適
- 電気機器・塗装品・精密機器などの吊り上げで活躍
- 角荷では摩耗しやすく、保護材が必要
スリングを選ぶ際は、荷の重量・形状・表面状態・作業環境(熱・油・屋外) という4軸で比較することが重要です。
フックの種類と用途(安全フック・ラッチ付き等)
フックは、スリングとクレーンを接続する要となる金具であり、「掛かり方」や「外れ止め」の有無が安全性に直結します。
代表的な種類は以下の通りです。
- ラッチ付きフック(セーフティフック)
→外れ止め機構があり、吊り荷の脱落防止に有効 - クレーンフック(吊り上げ本体側)
→上部装置側に取り付けられ、荷重方向が安定しやすい - スイベルフック(回転式)
→荷の回転によるスリングの捻じれを防ぐ - クリートフック・特殊ビーム用フック
→専用荷物に合わせて形状が加工されたフック
フックは「掛けられるかどうか」だけでなく、荷重方向・作業姿勢・外れ止めの有無 が正しい選定ポイントとなります。
連結金具(シャックル・アイボルト・リング等)の機能と使い方
吊り具はスリング単体で完結することはほとんどなく、荷との接続点や組み合わせ構造には連結金具が必須です。
シャックル
- 最も一般的な連結金具
- U字型(アンカ―)とバウ型があり、荷の動きや方向によって使い分ける
- ボルト式は安全性が高く、ピン式は着脱が容易
アイボルト
- 荷側にねじ込んで使用する専用金具
- 荷重方向が非常に重要。横方向荷重は強度が大きく低下する
- 荷の形状や重心に応じて複数個取り付けるケースも多い
マスターリンク・リング
- 複数本吊りで使用
- チェーンスリングやワイヤーロープスリングの上部に使用される
- サイズ・径・許容荷重の適合が必須
連結金具は見た目が小さい部品ですが、吊り荷全体の安全を左右する重要パーツです。荷重方向・ねじの締付状態・摩耗や変形の点検 が特に重要です。
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ワイヤーロープ吊り具の仕組みと特長
ワイヤーロープスリングは、建設・製造・物流など幅広い現場で最も利用される吊り具の一つであり、高い強度・耐久性・耐摩耗性 を備えています。その一方で、誤った使用方法や保管不良により、強度が大きく低下するケースが多いため、仕組み・特性を理解した正しい取り扱いが欠かせません。
ここでは、ワイヤーロープ吊り具の構造、キンクの発生要因、選び方のポイント、そしてJIS規格の位置付けをわかりやすく整理します。
JIS規格ワイヤーロープで加工した吊り具を選ぶ理由(品質・信頼性)
ワイヤーロープそのものには「玉掛け専用のJIS規格」は存在しませんが、JIS規格に適合したワイヤーロープを材料として加工した玉掛ワイヤー は、強度・仕様の信頼性が高く、現場で安心して使える大きなメリットがあります。
JISの意義は次の通り
- 第三者認証による材料性能の保障
- 安定した品質基準(素線強度・構成・製造精度)
- 公共工事・建設現場で求められる信頼性を満たす
ニッサンスチールでは、JIS規格ワイヤーロープを使用した玉掛ワイヤーの製造・加工に対応 しており、さらに 需要の多いサイズ(6〜24mm・2〜4m)を大ロットでも短納期で納品可能 な体制を持っています。
現場で求められる「安全・品質・スピード」のすべてを両立できる点が強みです。
ワイヤーロープ吊り具の用途別の選び方と安全に使う実務ポイント

吊り具の選定は、単に「吊れる能力があるか」だけでは不十分で、荷の形状・重量・環境・作業動線 など複数の条件を踏まえて最適な組み合わせを決める必要があります。ここでは、代表的な用途別の選び方と、現場で安全に使うための実務知識を整理します。
誤った吊り具選定は作業効率の低下だけでなく事故につながるため、体系的に理解しておくことが重要です。
用途別の選定ガイド(軽量物・重量物・長尺物・特殊形状物)
1. 軽量物の吊り上げ(荷物・設備・製品の移動など)
- おすすめ吊り具:繊維スリング(ベルト・ラウンド)
- 理由:軽量で扱いやすく、荷に傷をつけない
- 注意点:角荷には補強材が必須。摩耗・切断に要注意
2. 重量物吊り(鋼材・機械設備・大型部品など)
- おすすめ吊り具:ワイヤーロープスリング、チェーンスリング
- 理由:高強度で耐摩耗性が高く、重量のある荷に適合
- ポイント:吊り角度が大きいと張力が増大するため、複数本吊りでは角度管理が必須
3. 長尺物の吊り上げ(パイプ・梁・鉄骨)
- おすすめ吊り具:ワイヤーロープスリング+上部金具(マスターリンク)
- 理由:複数点吊りにより安定した姿勢で吊れる
- ポイント:荷の重心と曲がりを防ぐ吊り位置の調整が重要
4. 特殊形状物・表面保護が必要な荷物
- おすすめ吊り具:繊維スリング+専用治具
- 理由:荷の形に合わせた接触が可能で、傷や変形を防止
- ポイント:治具の仕様・荷重方向を必ず事前確認
作業効率を高める吊り具の組み合わせ方
吊り具は単体よりも「組み合わせ」で性能を最大化できます。
作業効率を高めるポイントは以下の通りです。
- 回転の可能性がある作業
→ スイベルフックを併用して捻れ防止 - さまざまな荷を頻繁に吊る現場
→ 長さ調整ができるチェーンスリングが有効 - 荷の表面保護が必要な場面
→ 繊維スリング+保護パッド・角当てで摩耗を防止 - 複数本吊りを行う場合
→ 上部にマスターリンクを使用し、張力バランスを安定化
また、ワイヤーロープスリングは「径・長さ・端末加工」の組み合わせで用途に最適化できるため、現場ごとにカスタム加工ができるメーカーを選ぶことが作業効率向上に直結します。
ニッサンスチールでは、規格外寸法の別注にも対応し、必要数量を迅速に製作可能です。
点検・保管・交換基準(ワイヤ・チェーン・金具の共通チェック)
吊り具の破損・落下事故の多くは 点検不足 が原因と報告されています。
厚労省「クレーン等安全規則」およびJISの考え方を踏まえると、以下のチェックが現場での必須項目です。
使用前点検(全吊り具共通)
- 摩耗・変形・腐食がないか
- ワイヤーロープの素線切断、キンク、座屈
- チェーンの伸び、ねじれ、曲がり
- フックの開き(口開き)、ラッチの破損
- シャックル・アイボルトのネジ緩み
- 荷重標示(WLL)が読み取れる状態か
異常があれば原則使用不可。即交換が基本です。
保管の基本
- ロープ・チェーンは湿気や薬品・油分を避けて保管
- 結束状態のまま長期間放置しない
- 繊維スリングは陽光による劣化を防ぐため暗所保管が望ましい
交換基準(例)
- ワイヤーロープ
→ 一定長さ内の素線切断数が基準超過/キンク/著しい摩耗・腐食 - チェーン
→ ピッチ伸び、曲がり、ねじれ、亀裂 - フック・シャックル
→ 開き・変形・ピンの緩み・摩耗
適切な点検と保管を行い、明確な基準に従って交換することで、事故リスクは大幅に低減できます。
まとめ|すべての現場で安全と効率を両立するための吊り具選定ポイント
吊り具は、ワイヤーロープ・チェーン・繊維スリング、そしてフックやシャックルといった金具類まで多岐にわたり、それぞれ特性や適した用途が明確に異なります。
安全に吊り作業を行うためには、(1)荷の重量・形状・方向、(2)作業環境、(3)吊り角度と重心 を正しく把握した上で、最適な吊り具を選び、点検しながら使用することが不可欠です。
特にワイヤーロープスリングは、強度・耐久性に優れる一方、キンク・素線切断・摩耗 が発生すると強度が大きく低下するため、日常点検と適切な保管が現場の安全を左右します。
チェーンスリングは耐熱性と調整性に優れ、繊維スリングは軽量で荷を傷つけにくいなど、吊り具の特性を理解しておくことで作業効率は大きく向上します。
ニッサンスチールでは、JIS規格ワイヤーロープを使用した玉掛ワイヤー の製造・加工に対応しており、 需要の多いサイズ(6〜24mm/2〜4m)なら大ロットでも短納期で納品可能 な体制を整えています。また、規格外寸法や特殊仕様にも柔軟に対応でき、現場の「困った」をすぐに解決できる加工メーカーとして多くの建設・物流・インフラ現場の吊り作業を支えています。
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