「玉掛け作業でこんな不安はありませんか?」
- 安全荷重と破断荷重の違いがよく分からない
- 吊り角度や偏荷重をどう計算すべきか不安
- 点検や交換基準をどこまで守れば安全か判断に迷う
本記事では、「安全荷重=破断荷重÷6(クレーン則213条)」の意味と根拠を基礎から解説します。さらに、吊り角度と荷重計算、早見表の正しい使い方、点検・交換基準、教育の重要性までを整理しました。
新人教育からベテランの再確認まで役立つ、現場の安全を守る必須知識を凝縮しています。
ニッサンスチールはJIS規格ワイヤーロープを基盤に、安全性を保証しながら、規格外・特注や大ロットにも柔軟に対応します。
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玉掛けワイヤーロープの安全荷重の定義とクレーン規則213条について

安全荷重:ワイヤーロープが通常の作業条件で安全に耐えられる最大荷重。
破断荷重:ロープが切れるまでに耐えられる最大値(試験値)。
安全荷重は、摩耗・腐食・曲げ・衝撃などの現場要因による強度低下等のリスクを見込んで、安全係数で割り込んだ保守的な基準として定められます。新品時の破断荷重をそのまま使うことはできません。
ワイヤーロープの破断荷重と安全荷重の違い
- 破断荷重とは、「ワイヤーロープが試験で切れる荷重。最大限の強度を示す値です。」
- 安全荷重とは、「実際に使用できる荷重。破断荷重に「安全率」を掛けて決めます。ワイヤーロープの場合、日本国内では通常 安全率 5~6 が用いられます。」
※ [計算式:安全荷重 = 破断荷重 ÷ 安全率]
例)破断荷重が12tでも、安全荷重は12÷6=2tが原則です。
この区別を誤ると、余裕があるように見えても過負荷に陥り、素線切断や突然破断につながります。
「安全荷重=破断荷重÷6」と安全係数の根拠
クレーン等安全規則 第213条は、玉掛け用ワイヤーロープの安全係数を6以上と定めています(定義:安全係数=切断荷重÷最大作用荷重)。
したがって安全荷重=破断荷重÷6を最低条件として運用します。
※ フック・シャックルなど用具によっては基準値が異なるため、品目ごとの安全率を確認してください。
クレーン協会が周知する安全の考え方
日本クレーン協会の講習・教材では「破断荷重は使える荷重ではない」こと「安全率6は最低ライン」であることが述べられています。法令順守と安全教育が現場の安全を守ります。
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現場で役立つ玉掛けロープの安全荷重計算方法
玉掛け計画の基本は、①荷の情報(質量・重心・吊り点)、②吊り方式(本数・配置)、③角度・重心(偏心の有無)、④用具仕様(ロープ径・構造・強度区分)を数値で押さえることです。計算の「前提条件」を明確にすると、選定ミスを防げます。

- 左:垂直吊り(0°) … 荷重100% → 各ロープ50%(分散)
- 中:60°の2点吊り … 各ロープ約58%(合計約115%)
- 右:120°の2点吊り … 各ロープ100%(合計200%)
※ 角度が開くと各脚の張力は急増します。角度管理も安全に関わることを認識しておきましょう。
吊り荷の質量から荷重を求める手順
- 荷の質量(kg)を確定(図面・伝票・実測)。
- 重力換算(kgfならそのまま、N換算なら×9.8)。
- 吊り本数で分散(例:2本なら理論上は半分)。
- 偏心(重心ズレ)を加味し、偏荷重側の最大値で評価する。
例)総重量2,000kg、2本掛け、均等見積りでも、実務は1,150〜1,300kg/本程度を最大荷重として扱うのが安全的。
吊り角度と安全荷重の関係
2点吊りにおける各脚張力は、荷重の1/2に角度係数を掛けて算出します。
- 60° → 約1.15倍
- 90° → 約1.41倍
- 120° → 約2.00倍
角度が大きい場合は、本数追加・吊り点見直し・スプレッダービーム併用で張力を下げるのが実務の鉄則です。
計算例で確認
条件:総重量2,400kg、2本掛け、頂角90°、重心偏り+10%
- 理論分担:2,400÷2=1,200kg/本
- 角度係数:90°→×1.41 → 1,692kg/本
- 偏心加味:+10% → 約1,861kg/本
→ 各脚は1.9t以上の安全荷重が必要。
ここから「破断荷重≥1.9t×6=11.4t」を満たす径・構造へ落とし込み、メーカー表で最終決定します。ギリギリのサイズではなく1つ大きいサイズを推奨します。
ワイヤーロープ径・種類別の安全荷重表と正しい使い方
安全荷重表(早見表)は、径・構造・素線強度ごとの破断荷重を安全係数で割った目安値です。使用時はJIS規格の最新カタログやメーカー資料を参照し、吊り方式・角度補正を加えた“実張力”と必ず突き合わせましょう。
玉掛けワイヤーロープ径ごとの安全荷重表
同じ径でも、構造(6×24、6×37等)や素線強度が違えば破断荷重は変わり、表の値も変わります。
表を使う際は、径 ・構造 ・ 引張強度区分の順に正確にトレースし、安全係数6(最低基準)を適用した「使用上限」として読むのが基本です。
※ 設備や荷姿により、曲げ半径(ドラム・シーブ径)が小さいと許容が下がる場合があります。表は万能ではないと心得ましょう。
JIS規格とメーカー保証の確認ポイント
JIS規格では、クレーン用ワイヤーロープの取扱い・保守・点検・廃棄の原則を定めています。
表の値を静的な数字として鵜呑みにせず、取扱い・保守状態で実力値が変動することを前提に、
JIS規格 ・ 最新の表 ・メーカー保証の三点照合で判断してください。
「早見表だけでは危険」—現場での落とし穴
- 角度未補正:表は垂直吊り前提が多く、90°超の二点吊りでは各脚張力が倍増する場合があります。
- 摩耗・腐食の見落とし:外観が良好でも内部腐食で実強度が低下することがあります。
- 温度や化学環境:高温・腐食性雰囲気では性能が下がる。
はあくまで検討の目安とし、最終判断は点検記録や実際の状況に応じて行ってください。
| 区分 | 内容 | ポイント |
| 左:安全荷重表 (基準条件) | 新品・常温・乾燥環境が前提 | 表の数値は「理想状態」の基準値であり、現場そのままではない |
| 中:現場の実際 (劣化要因) | 高温/海辺(腐食)/小径シーブ(過大曲げ応力) | 使用環境により性能低下。 表の値よりも実際の強度は下がる |
| 右:最終判断フロー | 安全荷重表 → 荷重計算 → 点検記録 → 現物確認 | 表はあくまで出発点。 最終判断は「計算+点検+現物」で行う |
- 左:安全荷重表(基準条件) … 新品・常温・乾燥環境が前提
- 中:現場の実際(劣化要因) … 高温/海辺(腐食)/小径シーブ(過大曲げ応力)
- 右:最終判断フロー … 安全荷重表 → 荷重計算 → 点検記録 → 現物確認
玉掛けワイヤーロープの安全荷重を守るための点検・交換基準
安全荷重は新品で健全状態が前提に定められています。劣化したロープでは、表の記載上、強度が足りていても実際には十分でない場合があります。不適格ロープの基準を理解し、迷った場合は交換することが原則です。
不適格ロープの使用禁止基準
- 一よりの間(1レイ長)で素線10%以上が切断
- 直径の減少が公称径の7%超
- キンク(ねじれ変形)・著しい形くずれ・腐食
→ これらは即交換。「まだ使える」は通用しません。
作業開始前の点検・記録保存【毎日+定期で二重管理】
クレーン等安全規則では、当日の作業開始前点検が義務付けられています。異常発見時は直ちに使用を中断しましょう。
年1回以上の自主検査や社内の定期点検を重ね、記録を保存しておきましょう。
有資格者・教育の徹底
また、玉掛け技能講習修了者などの有資格者の就業を規定されています。1t未満でも特別教育が必要になります。
計算が正しくても、合図の齟齬・角度管理ミス・吊りポイント選定ミスが事故につながることもあります。人の教育も安全にかかわる重要な項目です。
まとめ|安全荷重を守り、現場の“当たり前の安全”をつくる
- 安全荷重=破断荷重÷6(213条)は最低限の決まり。
- 数字は角度・偏心を加味した“実張力”で考え、余裕を持たせておく。
- 安全荷重表はあくまで参考とし、JIS規格の最新表 ・ 実際の状況 ・ 点検記録の三点で判断し、早めの交換を心がける。
- 安全教育と日常点検の徹底。
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